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【小説】巨乳サキュバスの楽園2‐甘美なる堕落‐

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2016/ 12/ 13
                 
前回の続きです。これからは僕以外の小説なども掲載していく予定です!


【巨乳サキュバスの楽園2‐甘美なる堕落‐】

 放課後の音楽室。
 鮮やかな夕刻の光に照らされた室内は、どこか幻想的でさえある。淡く黒光りするグランドピアノからは、今にも気品に満ちた音色が聞こえてきそうだ。

「ああ、あああぁ……っ」

 その情景に反して、奏でられるのは情けのない喘ぎ。生々しい肉同士がぶつかり合う音、粘性の何かが擦れ合うような……。それは、剥き出しとなった乳房による征服だ。
 一糸まとわぬ姿の女子生徒二名が、同じクラスの男子を凌辱している。必死に手放すまいと抱きかかえていた理性は、堕落を誘うような膨らみにむしり取られた。
 私水蓮学園に編入した、唯一の男子生徒。如月宗次は、正体を現した二名のサキュバスによって犯されていた。どのくらいの時間が過ぎたのかは分からない。引き延ばされた時の中で、もうずっと精液を吐き出している感覚すらあった。

「約束が違いますよ、有沢さん。どうしてあなたが、宗次くんのおちんちんをパイズリしているんですか」

 宮内月夜が、眉をひそめながら宗次の顔に胸を寄せる。

「約束は守ってるよ。宗次のチンコ、勃起してるじゃん。手を出すな、とは言われてないもんね。それにツッキーは、もう五回も射精させたでしょ」
「あなただってもう四回は射精させています。同じようなものです」
「ええー、一回の差は大きいって。とりあえず、もっかい射精させちゃうから」
「……仕方ないですね。では、また《精力増強》で回復させてください。宗次くんの命にも関わります」
「りょーかい」

 気だるげに頷いて、有沢アリスは胸による愛撫を再開する。尋常ではない大きさを誇りながらも、瑞々しい張りを保っている二つの膨らみは、勃起したペニスを容易く呑んでしまう。見事な半球を描いている胸元が、ペニスを貪るたび厭らしく形を変える。どこまでも沈み込んでしまいそうな、底なしの快楽。ずぶずぶと乳肉に埋もれながら、上下左右に揺さぶられる。宗次のペニスは、いつ暴発してもおかしくなかった。

「宗次は変態だね~。あたしのこと意識してないような素振りだったけど、おっぱいに挟まれて四回も射精するなんて。普段から、考えてたんでしょ? あたしの制服に閉じ込められたおっぱい♪ その感触や、触り心地も」

 襲い掛かる衝撃。谷間にこぼれた精液を攪拌するような胸の動き。精を搾り取ろうと、生き物さながらに蠢く。
 月夜のパイズリとは別物だった。相手のツボを見抜いた上で、緻密な膨らみの変化を与えてくる、計算高いパイズリ。それが月夜の得手とする技だが、アリスのはまったくの正反対と言っていい。ただ欲望のまま、射精に導こうとペニスを喰らう。荒波のような激しい愛撫が、幕なしで繰り返されるのだ。計算や技巧などは意識していない、ひどく人間的なパイズリ。けれども極上と評するべきアリスの巨乳は、触れているだけで快楽を呼び起こす。おそらくは《精力増強》のチャームを併用した、天然の性器官……そう例えたくなるほど、彼女の乳内は気持ちが良い。

「あたしの胸を想像して、オナニーしてたんでしょ~? 宗次の頭の中で、あたしはどんなことされてたのかなー。荒々しく胸を揉みながらの、強制パイズリとか? ……当たらずといえども遠からず、って顔だね。まあ、今の状況とは真逆なんだけど♪」

 乱雑とも言える手つきで、鷲掴みにされたおっぱいが擦り付けられる。どこまでも執拗なパイズリだ。休むいとまを与えず、射精を求めるように乳肉が弾む。きつく閉じられた谷間に囚われ、ひたすら揉みくちゃにされる。

「私のことも忘れてもらっては困ります」

 宗次の意識を引き戻すように、顔面へ当たる乳房。仰向けとなった彼の頭を押さえつけているのは、月夜のおっぱいだ。たわわに実った果実を垂らし、鼻の辺りを圧迫する。ミルクにも似た甘い香りが漂い、昂奮を高めた。ときおり顔を引っ掻くみたいに掠める乳首の、絶妙な感触が堪らない。
 宗次は、視界と触覚をおっぱいによって御されていた。抵抗しようともがく感情は、とうの昔に制圧済みだ。なす術もなく、悪魔のような膨らみに溺れていく……。

「もう少しで射精しそうだね~。同級生のエッチなおっぱい挟まれながら、無様に射精。おっぱいの中にどぴゅどぴゅって種付けしちゃうんでしょ~きゃはは♪」

 こちらの限界を読み取ったのか、乳房がでたらめな動きで捏ね回される。暴れる二つの膨らみは、ペニスの動きを完全に押さえた。媚肉の内に没し、そのまま容赦ない上下動を加えられる。一方的すぎる展開だ。微かな痛みさえをも伴いながら、しかしそれを上回る快楽によって責め立てられる。珠の汗を散らしながら、荒々しくペニスをかき回す乳肉。その様相は、さながら暴食だ。身動きの取れない肉棒に、全方位から突き立てられる官能の牙。……ただし、それは蕩けてしまいそうな軟性で。宗次はあっという間に限界を迎えてしまった。同級生の乳内で、弾けるように精を噴き上げる。

「はい射精♪ ザーメン勢いよく出てるねー♪ すっごいエッチな匂いだぁ。おっぱいの中に、熱い精液が注がれてる……♪」
「う、あぁぁ……」
「吐精お疲れ様――なーんて、まだだよ♪」

 ぎゅぅぅぅぅ、と。最後の一滴まで搾り取る、凄まじい乳圧。そこから繰り出される、駄目押しの仮借ない蠕動。どぴゅっ、と残りの白濁が飛び出した。

「あははは、やっぱりまだ出た♪ あたしのおっぱいに犯されておきながら、精液を残すなんて許さないんだから」
「……はあ、はぁ、うぅ……」

 呼吸が乱れていた。度重なる射精に、宗次の身体は休息を欲している。その内心を表すように、ペニスも活力を失って萎んでいた。

「おちんちん、可愛くなっちゃったね。でも、まだ頑張ってもらわないと♪」
 
 雄の精を搾り取る、色欲の悪魔。その赤い瞳が、無防備な宗次を一舐めする。

「おっきくなーれ♪ チンコ膨らんじゃえ♪」
「う、ああぁぁ……っ!」

 途端に、股間がムズムズとした。萎れていた竿が、その身を起こす。みるみるうちに大きく膨れ上がり、皮から大部分の肉傘が露出した。
 勃起したペニスを眺め、月夜は満足げに鼻を鳴らす。

「んじゃ、最後は公平にしようか」
「二人一緒に、という意味ですね。分かりました」

 顔からおっぱいを離して、宗次の正面に回り込む。アリスはその横に移動して、同じくうつ伏せの姿勢を取った。

「一体、何を……」

 困惑する宗次に、二人のサキュバスは意味深な目配せを交わす。そうして、寝そべっている彼の股間へ近づくと、屹立するペニスに胸を合わせた。計四つの膨らみが、陰茎を中心に寄り添っている。互いの色鮮やかな乳首が一瞬、擦り合された。月夜はびくっと身を震わせる。

「んっ、乳首……当たっていますよ」
「えへへ、わざとー。うりうり♪」
「あっ、んんぅ……もう。ちゃんとしてください」
「はーい。……それにしてもさあ、贅沢なパイズリだよねぇ、宗次♪」

 その柔らかさを余すところなく伝えるように、大きな乳が寄せられる。すると、反対側からも乳肉が迫った。乳房がぴたりと密着し、それぞれの形を変えている。

「二人のクラスメイトによるパイズリなんて、体験できる人は稀有ですね」

 流れ込んでくる快楽は、おっぱいの二乗。まるで満員電車の中で揺られている気分だった。ただし、自分以外の乗客は皆女性だが。

「ダブルパイズリ最高でしょ~? もっと押さえ付けてあげる♪」
「ん……強く押しすぎです。私だって……」

 一方が圧力を強めれば、負けじともう片方の乳圧も増していく。逃げ場を失ったペニスは、ただひたすら乳房の狭間で踏み躙られる。怒張には凄まじい快感が走っているはずだ。にも関わらず、宗次の意識は朦朧としていた。あまりにも桁が違いすぎる。柔らかな質感と、ちょうどいい塩梅の弾力。それらが渾然となって、勃起したペニスを責め立てている。ゼロ距離で発砲を受けたような衝撃、脳天を突き抜ける快楽が、何度も執拗に繰り返される。宗次の身体が大きく痙攣した。

「ふふ、おっぱいのせいで頭おかしくなっちゃったかな♪ もっと狂わせてあげる。ねっ、ツッキー」
「合わせ技ですね」

 何かを図るように、二人の視線が絡まる。その瞬間、息を合わせた上下動が始まった。

「ううぅうっ、あ、ああぁ……っ!」

 重量を感じさせる乳肉が、大きく前後に揺すられる。ずり、ずり、ずり……っ! 激しく音を立てながら、先ほどまでの不規則な動きから一転し、統率の取れたパイズリが襲い掛かる。乳肉の暴力。そんな言葉が宗次の頭を掠めていった。

「他の子の巨乳と密着させてからの、連携パイズリだよ♪」
「私たちの、おっぱいの感触。存分に味わってくださいね♡」

 気品を漂わせながら猛々しく。獰猛でありながらも清楚。
 苛烈な二種のパイズリに、文字通り手も足も出ない。全身の感覚が、ペニスに集中してしまう。頭の中は甘い刺激に占められていた。そこへ追い打ちをかけるように、快感は持続していく。幾度となく腰が悶え、意識を手放しそうになる。サキュバスは攻撃の手を休めない。寄せた胸元を用いて、柔肌の感触を伝播させる。容赦ない猛攻。膨れ上がっていく射精感に、宗次は喉を絞った。

「もう限界みたいだね~♪ いいよ、あたしたちのおっぱいの中で情けなく射精しちゃって♪」
「そうですね。私のおっぱいがもたらす快感に、耐えられるはずもありません」
「ええ~? 私のおっぱいの方が気持ち良いって」
「いえ、私の方が柔らかさも上手です」
「そんなことないってぇ!」

 ずりずり、ぐちゅぐちゅ、ぱふぱふ……♪ 
 イキそうになっている宗次を差し置いて、二人は口論を始めてしまう。意見は噛み合っていないのに、なぜだかパイズリの呼吸は合っている。奇妙な合致を見せながら、舌戦に合わせて抽送も速まり――
「あたしのおっぱいは張りが自慢なんだよね」ぎゅぅぅぅぅ。
「私のおっぱいは柔らかさが突出しています」むぎゅぅぅぅ。
「あたしだって負けてない! というか、マシュマロみたいに柔らかいし!」
「本当ですか?」ぎゅぅぅぅぅ。
「んんっ、強く押しすぎだって……このぉ」ぎゅぅぅぅぅ。
「やはり、私の方が魅力的なおっぱいです」
「いいや、私の方が極上のおっぱいだね!」
「そんなはずはないです。毎晩ケアもしていますし」

 月夜の言葉に否定が差し込まれ、アリスの意見に反駁が加わる。巻き起こった論争が、乳肉の圧迫を際限なく高めていき――
「ああぁっ、ああああぁ――――っ!」

 美少女のおっぱい×2に挟まれたまま、宗次は乳内へと精を放った。降り注ぐスペルマは、両者の胸元を平等に白く染める。どちらからともなく胸を離すと、ねっとりとした透明な糸が二人を繋いだ。

「……まあ、ツッキーのおっぱいも良かったよ」
「……そう言う有沢さんだって、正直、とても柔らかいおっぱいでしたよ」
「ふふ、あはは。精液、食べちゃおうか」
「はいっ」

 あっという間に和解した二人が、胸にこぼれた精液を舐めとる。気を失ってしまった宗次のことなど、もはや眼中にないようだった。

「れろ、ちゅる、んむ……濃厚で、病みつきになっちゃう♪」
「れる、ちゅろ、ちゅく……確かに。この味、んっ……身体が熱くなってしまいます♡」

 精液に夢中となっている、二人のサキュバス。失神した宗次を揺するように、あの不気味な〈チャイム〉が流れ始めた……。


 翌日。宗次は四時間目の授業を終えた頃合いに、遅れて登校した。身体に疲労が溜まっていたせいか、泥のように眠り続けてしまったのだ。本当は行きたくなかったが、学業を疎かには出来ない。複雑な思いが渦巻く中、宗次は意を決して自分のクラスに向かった。

「宗次くん、おはようございます。重役登校ですね」

 騒がしい昼休みの最中、教室に入った彼を出迎えたのは、穏やかな笑みを浮かべる宮内月夜だ。丁寧に編み込まれた髪を一房掬って、さらりと流す。甘い香りが鼻を衝いた。
 怯みそうになるも、宗次は露骨に顔をしかめる。放課後にならなければ、彼女たちは自分と同じ人間だ。何も恐れる必要は無い。

「どうしたんですか? 何か体調でも優れない、とか……」
「誰のせいだと思ってるんだ」
「え?」
「とぼけるのもいい加減に――」

 言い募ろうとして、宗次は気付いた。目の前の宮内は、本当に事情が呑み込めないといった表情を浮かべている。不安げに手繰り寄せた黒髪を、ぎゅっと握りしめていた。

「あ、ええと……」

 言葉に詰まってしまう。……もしや、と思った。

「放課後のこと、憶えてるか?」
「放課後、ですか? 昨日は……特に何もせず、帰宅したとは思いますが」
「そう……か」

 けれんのない態度に、宗次は糾弾する力を失った。一言「何でもない、ごめん」と告げて自分の席へ向かう。椅子に座って、頬杖を付きながら考えた。
 あのサキュバスに作用する〈チャイム〉は、記憶を消してしまう効果もあるのではないか。彼女たちは淫魔でありながら、その半分は人間だ。学園生活を円滑に送るため、そのような措置が取られていても不思議ではない。
 ……なんて始末の悪い。がっくりと項垂れる宗次の背が、つんと指先で突かれた。振り返ると、そこには向日葵のような笑顔を浮かべた有沢アリスがいた。にっこりと細められた瞳は、天真爛漫な輝きを宿している。

「おはよん。どうしたー? そんな不景気そうな顔して」
「……昨日、散々な目に遭ったんだ。誰かさんのせいで」

 宗次はぼやくように言って、重い腰を上げた。

「? 良く分からないけど、どっか行くの? 暇だし、あたしも――」
「トイレだ」

 ぴしゃりと告げて、教室から出て行く。……しばらくは切り替えるための時間が必要だ。あてどもなく廊下を彷徨いながら、ぼんやりと思案を続ける。
 問題は放課後だ。チャイムが鳴る前に、いち早く校門から抜ければどうだろう。いや、それより先に正門が封鎖されている可能性もある。ともすれば終了の鐘が鳴り響かないと、俺はこの学園から出られないのかもしれない。その推測が当たっているのなら、あの時間帯を逃げ回らないといけない。それとも、どこかに身を潜めるか? ……ともかくは一度、チャイムが鳴る前に脱出を試みてみよう。それでダメなら、どこかに隠れてしまえばいい。
 頭の中で計画を組み立てながら、適した場所がないか見て回る。俯きながら歩を進め、角を曲がったところで、不意に柔らかな感触とぶつかった。

「あら?」

 小首を傾げる女子生徒。ふんわりと広がる、緩くウェーブの掛かった髪。眉尻を下げた目元に、穏和そうな印象を与える微笑。女子にしては上背が高く、全体的に柔らかそうな線を描いている。特筆すべきは、制服の上からでも目立つ爆乳だ。おっとりとした佇まいに反して、胸元だけ主張が激しい。学内でも一、二を争う巨乳だろう。にも関わらず、目の前の女子生徒からは如何わしい雰囲気が漂ってこない。

「ごめんね、ぶつかちゃった」

 ふんわりと綻び、丁重に頭を下げる。口調は柔らかくても、態度は誠実だ。

「あ、いえ。俺も前向いてなくて……」
「……ん? ああ、君が噂の編入生ね。わたしのクラスでも噂になっているわ」

 どこか母性を感じさせる響き。……そこで、はたと気づく。いつの間にか、上級生の階まで来てしまったらしい。

「わたしは、倉崎琴和。一応、生徒会長を務めているの。君の名前は?」
「ええと、如月宗次、です」
「宗次くんね。よろしく」
「……あ、どうもです」

 すっと差し出された手を、躊躇いがちに握る。

「何か、悩みでもあるの?」
「えっ」
「宗次くん、心ここに在らず、って感じよ。わたしで良かったら、相談に乗るのだけど……」
「あ、でも……」

 言えるわけがない。なぜなら、この人もサキュバスなのだ。ひとたび放課後になれば、淫靡な姿を晒すのだろう。

「なるほど……。もしかして、放課後のこと?」
「えっ?」

 不安げに揺れる瞳を、じっと見つめ返す。なぜ、放課後のことを?
「わたしね、催眠には掛かっていないの。だから、君の力になってあげられると思うわ」
「……本当、ですか?」
「ええ。私は、生徒の味方だから」
「…………」
「信じられない? それも、仕方ないと思うわ。だけど、もし私を信用してくれるのなら、放課後、この階の空き教室に来て。他のサキュバスから、宗次くんを守ってあげる」

 そう言い残して、倉崎は「またね」と手を振る。遠ざかってく足音を聞きながら、宗次は考えていた。果たして、彼女の言葉は本当なのだろうか。罠の可能性も十分にあった。だとすれば、あの穏やかな表情の下には、淫猥なもう一つの本性が隠されているのか。
……思案に暮れる宗次の耳を、昼休みの終了を告げる鐘が揺さぶった。
 

 放課後。チャイムが流れる前に学園を出ようとしたが、それは徒労に終わった。校門には見えない結界のような壁が立ちはだかっている。押せばある程度は沈み込むが、それも数センチほどで宗次の手を拒絶してしまう。仕方がないので、校舎に取って返した。
 三階の廊下をうろついていると、例の〈チャイム〉が流れ始めた。それを合図に、女子生徒全員の動きが止まる。

「あ、あぁぁ……」

 ――言葉にならない呻き。程なくして、彼女たちの〈変身〉が始まる。妙案を思いつけないまま、宗次は昨日と同じように逃げ回る。疲労が祟っていたのか、その足元は覚束ない。

「宗次見っけ! また愉しもうよ~♪」
「昨日は手伝っていただきましたからね。幾ばくか、助力しますよ」

 最悪だった。正面から向かって来るのは、有沢アリスと宮内月夜だ。後者はともかく、アリスの運動神経は侮れない。今の宗次なら、追いつかれるのは時間の問題だろう。

「待て待て~!」

 二人が追って来る。宗次は息せき切らしながら、倉崎の言葉を思い返していた。彼女は、生徒会長という立場として自分を守ってくれるらしい。本当だろうか? 罠という可能性も考えられるが、その疑念はもはや意味を為さない。ここで倒れてしまえば、二人によって犯されてしまうのだ。そうとなれば、選択肢は一つしかない。
(……最後まで、悪あがきしてやるさ)
 倉崎の言葉に従い、三階の空き教室へ飛び込んだ。果たして、そこには彼女が待ち受けていた。積み上がる机の一つを引っ張り出したのか、その上に腰かけている。宗次の姿を認めると、倉崎は揺らしていた足を床に付けた。机から降り、友好的に手を広げる。その顔には柔和な笑みが広がっていた。

「待っていたわよ、宗次くん」

 数秒遅れて、中に追手が駆け込んでくる。アリスと月夜だ。荒々しく尻尾を揺らしながら、警戒するように倉崎を見据えた。

「あんた……誰? 人間?」
「この人、生徒会長ですよ。なぜ、サキュバス化していないのです?」

 二人の疑問に対し、倉崎は何とも答えない。その身体から尻尾と角が伸び、宗次を庇うようにして立ち塞がった。

「わたしには〈力〉がある。今回は、宗次くんから手を引くことをお勧めするわ」
「へえ……」
「では、こちらも〈力〉を行使しましょう」

 床を蹴り上げ、アリスが突っ込んでくる。月夜の瞳が瞬き、宗次の身体が勝手に動いた。
 まずい、これは《身体制御》――
「言うことを聞かない子には、少しお仕置きが必要ね」

 倉崎の手が持ち上がり、優雅に五指を曲げる。

「――《空間創造》クリエイト」

 瞬間、二人の身体が弾き飛ばされ、その姿を消した。最初から何の騒動も起きていない……そう断じていいほど、辺りは静まり返っている。物音一つ聞こえない。先ほどまでの二人は、どこへ消えたのか。俺は幻影にでも追われていたのか? 
 困惑を深める宗次に、倉崎が微笑みかけた。

「これは、私のチャームなの。自分が望む通りの空間を創り出せる――そんな力」
「ええと……」
「私は『宗次くんと二人だけの空間』をここに生み出した。それに伴って、指定外の二人は〈空間〉から弾き出されたというわけ。納得できた?」
「なるほど……。でも、あれ……?」

 何か、違和感が残る。この力は、まるで……。

「ふふ。賢い子は、好きよ」
「――っ」

 気づいてしまった宗次は、慌てて彼女から逃げ出した。空き教室の扉をスライドさせようとして、手が弾かれる。先ほどの感触と同じだった。この空き教室は『宗次と二人だけの空間』らしい。ならば、この場から宗次が抜け出す手立ては無い。完敗だった。せめてもと、たおやかに微笑む倉崎へ食って掛かる。

「校舎の結界……あれは、お前だったのか」
「うふふ」
「いや、それだけじゃない。あの催眠も、全部お前が仕組んでいたんだ!」

 あの〈チャイム〉は、ただの合図に過ぎなかった。催眠効果などなく、ただ倉崎に頃合いを伝えるためのもの。そして『サキュバスの力を解放させる空間』を創り出す。その逆もまた倉崎の能力だろう。狂乱が終われば『その時の記憶を一時的に封じてしまう空間』を生み出し、翌日の放課後に解除する。最初から、全ては倉崎の手によって踊らされていたわけだ。

「どうやら、全部気付いているらしいけど。でも、嘘は何一つついていないわよ」
「馬鹿にするのも大概に……っ」
「ぜーんぶ、本当よ。君を守ると言ったのも嘘じゃないわ。宗次くんが望むのなら、今回のように守ってあげる」
「自分で仕組んでおいて、よく言うな、そんなのは自作自演じゃないか」
「……それは生徒会長としての責務だもの。仕方ないわ。生徒たちを御せるチャームを持った者が、生徒会長に選ばれる。これは強制なの」

 責任逃れのような言い草に、宗次は苦笑した。

「なら、今すぐここから出してくれ。どうせお前も、俺を襲う気なんだろう」
「いいえ、そんなつもりはないわ。生徒の味方だって、言ったでしょう? 既定の時間が過ぎるまで、ここに匿ってもいい」
「…………」
「私は、君の望みを叶えたいの。生徒たちの、味方だからよ」
「一体、何を――」
「つまり、こういうこと♡」

 突然、股間に甘い刺激が走った。みるみるうち、痛いほどにズボンを押し上げる。堪えきれず、ペニスを取り出してしまった。

「くそ、やっぱり……っ」

 簡単だ。『宗次の興奮が高まる空間』を創り出したのだろう。そう勘ぐっていたのだが、琴和は首を振る。

「私はただ『宗次くんが素直になる空間』を創り出したのよ」
「なっ……」
「つまり君は、この展開を望んでいたの。最初に出会った時から、欲望に塗れた視線でわたしの身体を視姦していた。……君が見ていたのは、この部分でしょう?」

 何の躊躇いもない手つきで、琴和は身にまとっている衣服を脱ぎ出した。ワイシャツのボタンを全て外すと、白く滑らかそうな肌が露わになる。目を惹くのが上部の膨らみだ。むっちりとした厭らしい体つきの上、情欲を誘う肉感的な双丘が揺れている。知らずのうちに生唾を飲んでいた。

「ふふ。わたしのおっぱい、見えちゃう」

 誘惑するように身体をくねらせ、最後の砦となっているブラを外す。瞬く間に戒めの布を押し返し、おそらくは学園一を誇るであろう爆乳が飛び出した。巨大な餅のようなボリューム。真っ白な半球の中央に、淫らな乳輪が広がっている。ぷっくりとした乳首は熟れた果実を思わせる、色鮮やかなピンクだ。宗次は再び唾を飲み下し、その蠱惑的な身体に見入っていた。

「舐め回すような視線……とってもエッチね。でも、それだけ?」
「あ、ああぁ……」

 びくん、とモノが反り返る。宗次はゆっくりと歩を進め、琴和のおっぱいに触れていた。手のひらにはとても収まり切れない、瑞々しい感触。手を離しても、垂れることなく綺麗に形を保っている。月夜とアリスの張り、柔らかさを包含したような乳房だ。

「すごい、こんな……」

 夢中になって乳房を触っていた宗次は、いきなり服従するようなポーズを取った。ごろんと寝そべり、勃起したペニスを見せつけるようにする。

「な、なんで……」
「これが、君の望みだからよ。つまりぃ……」

 無防備な陰茎を、乳房の圧倒的なボリュームが包み込んだ。深く深く、谷間の内に呑み込まれて行く。触れたところから蕩けてしまいそうな感覚が、怒張を隅々まで締め付ける。手のひらによって両側から圧迫され、さらに内奥が狭まった。

「こうしておちんちん、挟んで欲しかったのよねぇ」
「う、ああぁ……」

 ひんやりと心地いい、乳肉による締め付け。かなり強力な乳圧なのに、不思議と痛みは感じない。まるで溢れ出る母性に抱きすくめられているような。全てを投げ出して、甘えてしまいたい衝動に駆られる。こんな気持ちは初めてだった。母性の象徴たる乳房が、甘い感触でもって宗次の脳を揺さぶる。正常な感覚が、締め付けの増幅と共にこぼれ落ちていく。

「あ、ぁぁ……おっぱい、おっぱいぃぃ……」
「ふふ、ずっと甘えたかったのよね。いいわよ、今日はお姉さんが甘やかしてあげる♡」

 理性が融けてしまいそうな、甘々の質感。童心にでも返ったような懐かしさが、締め付けられたペニスを中心に広がっていく。

「毎日大変だったでしょう? ごくろうさま。お姉さんのおっぱいで、たくさん癒しのパイズリしてあげるわね♡」

 密着した乳房が、どこまでも優しい手つきで揺すられる。派手な刺激は無いのに、これほどの快楽を覚えたのは初めてだ。性的な快感の他にも、癒しとしか形容できない心地良さが含まれている。耽美な乳肉に埋められた陰茎は、少ない動きの中で早くも先走りを滲ませていた。濡れた乳房がすべりを良くし、滑らかにペニスが擦られる。耐えきれず、恍惚とした喘ぎが漏れてしまう。そんな宗次に対し、サキュバスは艶然と微笑む。

「今の顔、とっても可愛かったわよ♡ 我慢なんてしないで、素直に甘えてくれた方がお姉ちゃん嬉しいんだけどなぁ……♡」
「素直、に……。俺は……僕、は……」

 僕だって? 一体、何を言っている。それは、小学校の頃に用いていた一人称だ。クラスメイトに揶揄されてから変えたはず……なのに。どういうわけか、馴染んでしまう。肩の力がすぅっと抜け落ちる。僕は、もう……。

「ふふ、言っていいのよ。お姉さんに、どうして欲しいの?」
「お姉さんに……もっとパイズリ、して欲しい……。たくさん、甘えたい……」
「良く出来ました♡ 素直で可愛い子は、好きよ」

 寄り添う乳肉が、前後に大きく揺すられた。津波のような快楽。前後に激しく波打つおっぱいから、珠の汗が散る。

「お姉さんのおっぱい、気持ち良い? 我慢汁が、いっぱい出ちゃってるわよぉ♡」

 上下動に徹しながらも、断続的に両側から圧迫を加えてくる。

「お姉さんのおっぱいの感触、もっと味わってねぇ♡」

 鷲掴みにした乳房を限界まで寄せる。きつい圧迫なのに、まるで際限がないみたいにペニスは沈み込む。強い乳圧がぎゅうぎゅうとモノを刺激し、その状態を保ったまま激しい抽送が行われるのだから、身に受ける快楽指数は計り知れない。
 おっぱいの海は温かく、ペニスは瑞々しい乳肉の海底に沈んでいく……。

「お姉ちゃん、僕もう……ああ、ああぁっ!」
「良いわよぉ。お姉ちゃんのおっぱいの中で、溜まったエッチなザーメン、どぴゅどぴゅって射精しちゃいなさい。たまたまの中身を空にする勢いで、乳肉の奥まで精液で満たしてぇ♡」

 射精間近のペニスが、より淫らな動きによって捏ね回される。単調な前後動から、互い違いにおっぱいを擦り付ける動きへ転じる。そのパイズリはねっとりと緩慢で、乳房の感触をペニスの隅々まで行き渡らせるような変位だ。雄大な乳肉が弾み、膨らみの内に没し、再度締め付けられる。ぐちゅぐちゅと淫らな音を響かせながら、おっぱいによる熱い抱擁を受ける。ぎゅうぎゅうと密着する乳肉からは、これまでのサキュバス達には無い、慈愛のような温かさが宿っていた。

「お姉さんのおっぱいに、君の精液ちょうだい♡ どんなにたくさん出しても、残らずおっぱいで受け止めてあげるわ♡」
「うぅ、あああぁ――――っ!」

 白濁を放ちながら、乳肉の最奥で跳ね回るペニス。射精と同時、琴和はぎゅぅっと谷間を押さえ付けた。精液の温かさとは別に、甘美なるぬくもりによって抱きしめられている。その甘い質感に囚われながら宗次は、何度も何度も精をほとばしらせた。

「ふふ、たっぷり出たわね♡ 君の射精する姿、とっても可愛かったわ♡」

 優しい手つきで、ふわりと頭を撫でられる。年上特有の、落ち着いた香りが漂う。

「ねえ、宗次くん。明日も、その先も……ずぅっと、お姉さんに甘えていいんだからね♡ 射精したくなった時は、このおっぱいを使わせてあげる♡」
「……はい……お姉ちゃん……」
「ふふ。うふふふ……」

 もはや宗次に、年相応の理性は残っていなかった。射精と同時に、何もかもが流れ出してしまう。空っぽな思考を蝕んでいくのは、甘美なる堕落……。彼は餌という立場も忘れて、黄昏時になるとサキュバスによって精を喰らい尽されてしまう。
 
 その、心までをも――。
                         
                                  
        

【小説】巨乳サキュバスの楽園‐淫靡な放課後‐

category - SS(あすきぃきゅーぶ)
2016/ 12/ 09
                 
以前pixivに載せたものです。パイズリ好きな方々の一助になればと思い、アップさせていただきます!

【巨乳サキュバスの楽園‐淫靡な放課後‐】

 まさに幸せの絶頂だ。見渡す限りの眼福な光景に、如月宗次は内心、緩み切った笑みを浮かべる。
 昼休みの時間帯。教室には姦しい声が飛び交っている。
 そこに男の声は一切混じっておらず、宗次の耳を通り過ぎていくのは女子生徒の華やかなソプラノだ。
 この学園に編入出来て良かった……宗次は自らの強運に感謝する。
 彼が籍を置く『私立水蓮学園』の生徒は元々、女子だけで構成されていた。
 しかし共学化を実現させるための下準備として導入された『男子交流制度』により、わずか一名の男子生徒がこの学園に編入出来る運びとなったのだ。
 水蓮学園は名うてのお嬢様学校として知られている。編入には難関とされる試験が待ち構えているのだろう、そう誰しもが考えていた。
 その予想を裏切るようにして発表された試験内容は、意外にも面接のみ。加えて応募資格は不問という破格の条件だった。お世辞にも頭が良いとは言えない宗次は、俺にもチャンスがあるかもしれないと勢いづき、自身のアピールポイントなど皆無にも関わらず、この面接に臨んだ。
 結果、凄まじい倍率の編入試験を突破してしまった宗次は、この花園に身を置いている。おそらくは一生分の幸運を使い果たしただろう。それでも構わないと、宗次は思う。
 水蓮学園に在籍している生徒は、押しなべて容姿端麗である。そんな話を聞いたことはあった。けれどまさか、それが噂の域を超えて事実と化しているだなんて、想像だにしていなかった。
 丸く大きな瞳、すっと通った鼻梁、形の良い唇。それらが寸分の狂いもなく配置されている細面。視界に入る女子生徒は、一人一人がアイドルのセンターを任せられるほど美しく、飽きもせず宗次の目を魅了した。しかも、皆一様にグラマーなのだ。可憐な華のような制服を押し上げる、蠱惑的な膨らみ。歩くたび、その柔らかさを訴えかけるみたいに弾む。

「……宗次さん?」
「んぇ?」

 不埒な考え事をしていた宗次は、その誰何に間抜けな声を返した。

「あ、ええと……宮内さん?」
「はい、宮内です」

 にっこりと微笑みかける、清楚かつ可憐な女子生徒。
 その美貌に、宗次は見惚れてしまう。
(なんて、綺麗なんだ……)
 大和撫子を象徴するかのような漆黒のロングヘア。艶やかな髪の一部が丁寧に編み込まれ、日の光に透ける肌は仄かな薔薇色を宿す。あまりにも造作が完璧すぎて、ぱっと見、精緻なドールのようだと思った。しかし柔肌の奥に透ける血色や、瑞々しい唇、豊かな胸の動きが、彼女は自分と同じ人間であると物語っている。

「もう、そんなに見つめないでください。照れてしまいます」
「え、いや、あはは。だって宮内さん、美人だし」

 ……宗次はどこまでも素直で、悪く言えば愚直だった。考えたことがそのまま口を衝いてしまう。面接時にも「美少女たちと交流を深めたいんです!」と胸の内に秘めるべき願望を口走ってしまった。それでもなぜか合格してしまったのだから、なぜ自分が選ばれたのか? という疑問は深まるばかりだ。

「お世辞を言ったところで、何も出ませんよ」

 うっすらと微笑みを浮かべた宮内は、彼の机に身を寄せる。やや前屈みなのが災いして、二つの膨らみが机上に乗ってしまう。制服越しにも関わらず、魅惑的な双丘はその形を浮き彫りにする。
 宮内の目線は、まっすぐ宗次に向いていた。彼女のおっぱいが机に座っていることは、どうやら意識の外にあるらしい。

「逆に、出してもらうのは宗次くんの方ですよ」
「だ、出す?」
「はい。宗次くんに出してもらわないと、私が困ってしまいます。……ここに来たのも、宗次くんが溜めているのが原因なんですよ」
「ええっ」

 この子は、いきなり何を言っているのだろう。宗次の頭に困惑と、わずかばかりの期待が押し寄せる。

「さあ、早く出してください。もう私、我慢できません」
「こ、ここで? 教室だぞ?」

 昼休みも半ばに差し掛かり、女子生徒たちは残りの時間を惜しむように歓談している。その中で、いったい何を出せと言うのか。ナニなのか。

「教室だからこそ、です」

 宮内はこともなげに言った。その堂々とした語調に、宗次は覚悟を決める。

「……分かった。宮内にだったら、出すよ」

 たとえ退学になったとしても……君とだったら。そんな想いと共に立ち上がった宗次へ、宮内はすっと手を差し出す。

「プリントの提出が遅れているの、宗次くんだけなんです。これで助かります」
「俺も男だ、覚悟はもう……え、プリント?」
「はい。先日の宿題も合わせて二枚、提出が遅れています」
「あー………プリント、ね」
 
 勢いづいて立ち上がった宗次は、そこで力を使い果たしたとばかりに着席した。がっくりと肩が下がる。無駄な叙述トリックを使うな。

「……明日、出すから」
「もう。絶対に明日、ですからね」

 ぷっくりと頬を膨らませたクラス委員長――宮内月夜は、すたすたと自分の席に戻って行った。長い髪の毛が流れ、フローラルな香りを漂わせる。……まあ、そんなオチだろうとは思ってたさ。校内露出とかあり得ねーし。

「ほんっと変態だね、宗次。ツッキーの胸、じろじろ眺め回して」

 消沈する宗次の後ろから、陽気な声が掛かった。振り向くと、特徴的な八重歯を覗かせる女子生徒――有沢アリスがほくそ笑んでいた。

「どうせ、エッチなことでも考えてたんでしょ~?」
「な、違うっての。俺は別に、宮内の胸なんか見てないし。エロいことだって……」
「ほーんと嘘が下手だねぇ。どうせ、あたしの身体にも欲情してるんでしょ~?」
「は、はぁ!? してるわけないだろ」
「ほんとぉ? ねえ、あたしで何回抜いたの?」
「ぬ、抜いっ――」

 下乳を支えるようにして腕を組み、挑発するように顎を逸らす。……抜いてない、といえば嘘になる。
 この小生意気なクラスメイト、有沢アリスもまた美少女なのだ。
 肩にかかる長さのショートヘアは快活そうな印象を醸しているのに、胸元の大きな膨らみがそれを裏切っている。女性的な錘をまとっていながらも、有沢は運動が得意だ。身軽な猫のような動きで走り、跳び、俊敏な身のこなしで実技をこなす。その度、上下左右に揺れ動く胸元は、バレーボールでも詰まっているのかと疑うほどだ。
 宗次はぐっと欲求を抑え込み、あらぬ方向に首を回した。

「チラチラ見てない?」
「……自意識過剰だ」
「今なら、特別に触っても良いよん♪」
「なに――っ!」

 ぐるんと首が巡る。その変わり様に、有沢はぷっと吹き出した。

「うっそー。ほんと宗次って単純♪ 単細胞ってやつぅ?」
「こ、この女は……っ」

 震え出す拳をどうにか宥め、宗次は息をつく。貴重な昼休みを無駄にしてしまった。

「ねえねえ、構ってよ~」
「俺は今忙しいんだ」

 しっし、と追い払うように手を振る。彼女は平然として言葉を続けた。

「周りの女子ばっか見てるだけなのに?」
「……っ」
「特にぃ、おっぱい♪」
「少しは口を慎め」

 軽口を叩く有沢に、堪えきれず振り返る。そうして言い合いを始めていると、昼休みの終わりを告げるチャイムが流れ出した。

「五時間目も頑張ろうね、宗次。授業中の視姦は禁止だから♪」
「……はあ」

 やれやれ、と溜息をこぼす。
(……まあ、何だかんだで嫌いじゃないけどさ)
 男子生徒は自分一人……そんな両手に花どころか花畑の中で過ごすのは肩身が狭く、最初は委縮がちだった。そんな宗次に初めて声を掛けてくれたのが、有沢アリスだ。

「質問。ハーレム気分はどう?」

 そんな軽い一言が、自分と女子たちの間に横たわっていた見えない壁を、容易く砕いた気がした。宗次はこの生意気ともいえる有沢に反発しつつも、こっそり有難味を感じていたのだ。
(ほんと、良い子ばかりだよな……)
 しみじみと思いつつ、宗次はこれからの学園生活に思いを馳せる。
 水泳、体育大会、学園祭……他にも様々なイベントが俺を待っている。
 宗次はライトノベルの主人公にでもなった気分で、美少女たちとの日々を満喫していた。
 
 編入して、ちょうど一週間が経つ。
 
 思い浮かべていた青春の青写真は、淫らな欲望によって塗り潰されていくことを、当人は知る由もない。
 宗次は考えもしなかったのだ。

《彼女たち》がもたらすであろう、欲望の惨禍を――。


 放課後になり、生徒たちは蜘蛛の子を散らすようにばらつき始める。
 宗次は帰宅部なので、当番にでも割り当たっていなければ、そそくさ学内から出て行く。
 部活動は二年になってからでもいいだろう……そう思いながら、学生鞄を手に取る。

「宗次さん」

 教室から出て行こうとした宗次を、柔らかな声音が呼び止める。
 振り返ると、箒を片手に微笑んでいる宮内がいた。

「今日の宿題も含めて、プリントは三枚ですからね。私、待っていますので」
「ああ、忘れずにやっとく」
「はい。ぜひお願いしますね」

 手を振って宮内と別れ、校内を練り歩く。一年生の教室は四階に位置しているため、当然ながら一階の下駄箱までは階段を使わなければならない。
 エレベーターでもあればいいのに。そんな不満を漏らしながら三階に下りたところで、不意に尿意を覚えた。
 昼休みは有沢と話していて、そういえば用を足していなかったな。増築されたばかりの真新しい男子トイレに飛び込んで、膀胱の違和感を解消する。はあ、すっきり。
 身震いしながらモノをしまったところで、ふと聞き慣れないチャイムが流れた。
 どこか音程の狂った、不規則な鐘の音。

(そういえば、放課後のチャイムって初めて聞いたな……)

 あまり気にしないで、宗次は男子トイレの扉を開けた。数歩ほど進んだところで、その違和感に気付く。
 生徒たちの物音がしない。放課後にも関わらず、だ。

(……何だ?)

 さすがに引っ掛かるものを感じて、下りていた階段を引き返す。教室が並んでいる廊下に向かうと、ますますその不気味さが際立つ。

「………………」

 女子生徒の様子がおかしい。皆一様に棒立ちで、静かに下を向いている。そこに一切の会話はなく、昼休みの賑々しい雰囲気が嘘のようだ。
 もしかして、体調でも悪いのだろうか。そう思って彼女たちに近づこうとした宗次は、垂れ下がる前髪の隙間から覗く目の色に、思わず踏み出しかけた足を止める。

 ――赤い瞳。

 何かまずいものでも見てしまった。そんな気分に駆られた宗次は、慌てて身を翻す。脇目も振らずに二階へ降りたところで、別の女子生徒を見かけた。

「……え?」

 更なる困惑が積み上がる。彼女もまた、赤い目の色をしていた。かてて加えて、頭の両脇から伸びる角と、スカートを貫いてのたくる尻尾を目の当たりにしてしまう。何だ……これは。前触れもなく夢の中に放りこまれた気分で、呆然と立ち尽くす。

「君……とっても美味しそう」

 女子生徒の口が、にたりと裂けた。
 宗次は我に返ると、女子生徒を迂回するように駆け出した。

「何だよ、何なんだ……っ!」

 恐怖感が込み上げて来る。空き教室の一つに身を潜めながら、彼女たちの変貌を盗み見てしまった。
 どう見ても人間のそれではない。細長い尻尾を器用に操り、何かを捜し求めるように真紅の瞳が蠢く。無機的というよりも、あれは欲望に塗れた眼光だ。ギラギラと異様に目を輝かせながら、女子生徒が空き教室の前まで近づいて来た。

「見ーつけた」

 探していたのは、俺なのか!?
 宗次は反対側の戸口から飛び出て、ひたすら校内を駆け巡る。脱出しようにも、階段付近には複数の女子生徒がうろついている。ただひたすらに逃げ回るしかなかった。

「一体、どうすれば……っ」

 荒い息を吐きながら、宗次はふらふらと壁に手をつく。そろそろ限界が近かった。そんな中で、曲がり角から複数の足音が迫ってくる。俺は、どうすれば――
「宗次くん、こっちです」

 聞き慣れた声。宗次は、はっと横を振り向いた。音楽室。その扉がわずかに開いている。
 救われた思いで、その中へと駆け込んだ。まろぶようにして音楽室へ行き着いた宗次に、女子生徒は柔らかな声を降らせる。

「もう、大丈夫ですよ」
「た、助かった……」

 肩で息をしながら、宗次は疲れた身を起こす。

「宮内、ありが――」

 礼を告げようとしたところで、宗次は見た。
 自分を助けたクラス委員長――宮内月夜。その身体から、人外のパーツが伸びている。細長い尻尾に、無骨な二本の角。宗次を見返す瞳は、赤く染まっている。
 化け物――そう叫び出しそうになった口許を、咄嗟に手で覆った。脂汗が、一気に噴き出る。

「どうしたんですか? 宗次くん」
「……っ」

 宗次は、すっかり混乱してしまった。その動揺を察したらしい宮内が、臀部から伸びる尻尾を手繰り寄せる。

「ああ。もしかして、この角や尻尾が気になるんですか? まあ、当然ですよね。邪魔なので今は仕舞っていますが、翼も出せるんですよ」
「お、お前は……悪魔、なのか?」

 正確には、宮内以外の女子生徒も、皆――
「その呼び名はちょっと心外ですねぇ。私は、サキュバスです。ここは、サキュバスの園なんですよ」
「さきゅばす……」

 現実味のない単語を反芻する。そのような知識に乏しい宗次でも、一度は耳にしたことのある名称だ。人の精を搾り取る、女の悪魔……。

「くっ――」

 身の危険を感じ取った宗次は、音楽室から出て行こうとし――その場から動けなくなっているのに気付いた。どんなに力を込めようとも、宗次の身体は反応しない。本体から外されたコントローラーを操作しても、キャラクターは動かない。宗次の現状が、まさにその例えと同じだった。
 サキュバスは、宗次の手から奪い取ったコントローラーを、本体に接続する――。

「これが、魅了チャームです。サキュバスによって異なりますが、私のはとてもシンプルです。宗次くんは、私の目を見ました。それで、お終いです」

 そんなの反則だ、と思った。しかしどう文句をつけたところで、状況は変わらない。身動きのとれないでいる宗次は、震える声で尋ねた。

「俺を……殺すのか?」

 サキュバス――月夜は、静かに首を振った。

「いいえ、殺しませんよ。ただ、精をいただくだけです」
「……生命力も、吸い取られるんだろう」

 どこかの本に、そんな情報が記してあるのを思い出した。月夜は「いいえ」と否定する。

「正確には、私はサキュバスでありながら、半分人間なんです。なので、対象の生命力を全て奪い尽すまでには至りません。複数人のサキュバスと交わるのなら話は別ですが、宗次くんを殺してはいけないと学園側から厳命されています」

 よもや学園ぐるみで俺を陥れようと……? 宗次の背を、ぞっとした冷気が這い上がる。

「今やサキュバスは、人間社会に馴染まないと生きていけません。催眠によって情欲を抑えているのも限界なんです。精を得られないと死にはしませんが、禁断症状に苦しみます」

 月夜はゆっくりとした歩調で近づくと、宗次の股間に手を這わせた。手慣れた所作でチャックを下ろすと、中から縮み上がったモノを取り出す。

「ふふ、可愛いですね」

 サキュバスはそう言って、自らの制服に手をかけた。制服を床に落とし、腰周りからスカートを外すと、薄桃色の下着が露わになる。シャツのボタンを一つ一つ、焦らすような手つきで外していく……。
 やがて、桜色のブラジャーが露出した。花びらをイメージしたような、華やかな下着。その艶やかさが差し色となり、月夜の透き通るような肌を映えさせる。

「この中……見たいですか?」

 ブラジャーの戒めを受けた膨らみは、少し窮屈そうにしているような……。つい考えてしまった宗次は、ぶんぶんと頭を振る。

「ほんと、解りやすいですね。良いですよ、私のおっぱい……見せてあげます」

 背中に回った手が、ブラのホックを外す。すると、豊かな乳房がまろび出た。ぶるんと白く波打ちながらも、綺麗な形を保っている。重力に逆らうようにして、つんと上向く膨らみ。その中心に色づく淡い蕾が、微かに膨らんでいた。

「あら……?」

 サキュバスの唇が、うっすら眉月を描く。向けられる眼差しを辿って、宗次は理解した。いつの間にか、萎えていたはずのペニスが勃起している。びくびくと反り返りながら、何かを期待するように硬さを増していた。

「やっぱり。私が、射精させてあげますね」
「や、止めろ……」
「どうして嘘をつくんです? こんなにも私を望んでいるというのに」
「こんなのは、違う……」

 宗次が期待していたのは、互いの想いを通わせるような甘い行為で……。こんな、一方的なものではなかった。
 月夜の丸い瞳は、水晶玉のように冷たい光を放っている。宗次を餌としか思っていない、透徹した眼差し。

「お前は、俺のこと……好きなのか?」
「それは恋愛的な意味ですか? 性欲を満たすための玩具としてであれば、それはもちろん好きですが……」

 前屈みになると、圧倒的なボリュームの乳房も垂れ下がる。

「恋愛的な意味でいうのなら、べつだん好きではないですよ」

 膝立ちとなった月夜の胸が、勃起したペニスを包み込む。
 柔らかさの中にも弾性を備えた、瑞々しい素肌の感触。熱く火照った肉棒を冷ますように、月夜の両胸はひんやりと心地良い。まさしくペニスを包むに適した体温の乳内に、宗次はぐっと呻いた。

「知っていますよ。私たちの胸、ずぅっと舐めるように見ていましたよね」
「そ、それは……」
「図星ですよねえ。サキュバスの目は、誤魔化せませんよ」

 両側から強く押さえつけられ、谷間が狭まる。挟み込まれている陰茎にも、左右からの圧迫が襲う。きつく押さえ付けられているはずなのに、痛みは感じない。むしろ安堵できるような温もりがペニスを包む。

「こうして、胸の中にいきり勃ったモノを入れたかったんですよね。厭らしいです。私と何気なく会話しながらも、胸の内ではおっぱいにおちんちんを入れることしか考えていなかったんですね」

 同級生の張りに満ちた乳肉を、欲望の化身が貫いている。豊かな乳房はペニスに合わせて形を変え、吸い付くように押し付けられる。根元から先端までをも、容易く呑み込んでしまう魔性の双丘。ぎゅうぎゅうと乳圧を強めていくその様は、まるで生殖器そのものだ。

「変態さんですねえ。ただ両胸でおちんちん挟んでいるだけなのに、もう濡れちゃってます。厭らしい先走りが、私の胸についちゃっているんですよ」
「うぅ……」

 もはや何も言い返せない。そんな宗次に、サキュバスは冷然と告げる。

「ちゃんと、自分の口で言ってください。この後、どうして欲しいんですか」
「この、後……」

 ぴたりと密着する胸の感触は、彼から冷静な思考を奪っていた。ふつふつと湧き上がる性的欲求が、宗次の口を押し開く。

「その胸で……俺の、アソコを……」
「声が小さいですねえ。私、耳は人間と同じ構造なので」

 宗次が発した蚊の鳴くような声を、月夜はさらりと流す。

「あ……」
「どうしたのです? もう一度、声を大きく明確に発言してもらわないと」

 眉をひそめたサキュバスが、両側から胸を押さえ付ける。乳圧で搾り出されるように、宗次は叫んでいた。

「あ、あああぁ……っ! お、おっぱい……」
「はい」
「その、すけべな大きさのおっぱいで、俺のチンコを、扱いてほしい!」
「良くできました。すけべなのは、宗次くんもですけど」

 くすっと微笑み、それまで押し付けるばかりだった胸元を、上下に擦り付け始めた。滑らかな感触が、竿の上をひた走る。生まれたての小鹿みたいに、膝がガクガクと震えた。

「こうしてパイズリされることが、夢だったんですよね。私のおっぱい、とても大きいので。どうせパイズリに適しているとか、そんなことを考えていたんですよね。変態さん」
「くっ、あぁ……」
「それだけに留まりませんか。胸の触り心地や、実際におちんちんを胸の谷間に入れた時の具合や温度まで、仔細に妄想していたのでしょう。どうですか? 私のおっぱい。同級生の女の子に迫られて、おっぱいなんかで支配されちゃう気持ちは。屈辱、それとも本望ですか?」
「あああぁぁ……んぁぁ……」

 もはや言葉にならない。それほどの快楽が、胸を通して伝わってくる。むっちりとした乳肉がペニスを咥え、大胆に揺さぶられる。柔肌に没していくような感覚。頭の中で思い描いていた感触など、児戯に等しい。とても同じ肌とは思えない、きめ細かさ。触れたそばから蕩けてしまいそうな軟体物質は、しかし圧倒的な物量でもってペニスを蹂躙する。谷間の奥に埋没するペニスが、びくんと跳ね上がった。寄り添う乳肉を押し返し、たぷたぷと柔肌を揺する。
 その跳ね上がりを御するように、乳圧が強まった。暴れる砲身は、あっという間に胸の抱擁を受けて静まる。

「はい、おちんちん逃がしませんよ。おっぱいの内に囚えて、濃い精液たくさん搾り取っちゃいますからね」

 母性を象徴するかのような膨らみに、きつく抱きすくめられてしまう。どこか安心できる温もり。それと同居するのは、射精へと導く卑猥な上下動だ。ずりずりと挟み込んだペニスを前後に、ときには左右からの揺さぶりも混ぜて責め立ててくる。

「そんなにパイズリが好きなんですか? 宗次くんのお顔、とっても情けないですよ」

 波打つ乳房が、断続的な刺激を送る。……奉仕というより、胸に犯されている気分だ。きつく締め付けられた肉棒は、その圧迫に反して何かを放出しようと震える。奥底から込み上げて来る射精感を、はっきりと自覚した。

「おちんちん、そろそろ限界みたいですね。私のおっぱいに犯されながら、無様に射精しちゃうんですか?」
「く、はぁ……」
「ちなみに、射精すると死には至りませんが、ある程度体力を奪われますので」
「な、に……くぁっ」
「まあ、もう手遅れですけど。宗次くんのおちんちん、パイズリされながら射精したいと訴えていますよ」
「そんな、こと……」
「嘘ですね。欲望を形にしたようなペニスと、そこから滲むエッチなお汁が証拠です。私の胸に囚われた者は、何人たりとも絶頂を迎えます」

 その言葉を裏付けるように、それまでの緩急をつけた動きから一転し、激しく淫らな抽送へと切り替わる。官能を高める扱き方ではない。これは、男から精液を搾り取るパイズリだ。

「さあ、射精しちゃってください。クラスメイトの巨乳におちんちん掌握されて、情けなく精を噴き上げるんです」
「う、ああぁ……!」

 たわわに実った乳房が、ペニスを咀嚼するかのように蠢く。先刻とは違って、窄まった胸の内が淫らに湿っている。汗と先走りが、肉壁にぬめり気を与えたのだろう。モノを咥え込む秘部みたいに、谷間の奥までが濡れそぼっている。ぐにゅぅ、と大胆に押し潰された乳房が滑り、ペニスを粘性の快感が包んだ。

「私の肥えたおっぱいに、あなたのエッチなザーメン。欲望の一滴まで残さず、胸の谷間に中出してください?」

 官能に染まった声。乳肉の狭まりを感じながら、おっぱいの内奥に射精していた。勢いよく噴き出るスペルマは、蠱惑的な半球をより白く染め上げる。ドロドロとした白濁が、胸の膨らみに沿って滴り落ち……、

「まだですよ?」

 ――不意打ちのように、ぎゅぅぅぅっと乳圧が強まった。先ほどの比ではない、強烈な締め付け。魅惑の挟撃に見舞われたペニスが、奥に溜まっていた精液を一滴たりとも残さず搾り出す。射精直後のペニスを手玉に取る、乳肉の収斂。耐えられるわけもなく、出し得る限りの精を放ってしまう。狂おしいまでの快楽が、精根尽き果てたペニスに刻まれる。

「ふふ、たくさん出ましたね。ちゅ、れろ……濃くて、厭らしい味。ご馳走様でした」

 事後にたぷたぷと乳肉で揺さぶられ、宗次は掠れた声を漏らす。谷間を左右に広げると、拘束を解かれたペニスが垂れ下がる。そのまま宗次は、制御を失ったようにくずおれた。

「お疲れ様です。と、言いたいところですが――」

 月夜は落ち着きを払いながらも、どこか熱の余韻を含んだ声で続ける。胸元の精液を掬う指が、悩ましげに蠢いた。

「初日とはいえ、一回で終わりというのも物足りないですね」
「……初日、って……」

 この日々が延々と続いていくような言い回しだ。宗次の萎れたペニスが、ひとりでに持ち上がる。

「そう、これは初日です。この学園に慣れるまで一週間が経ち、ようやく催眠が解除されたのです。この日をどれだけ心待ちにしていたか……」
「……催眠、だと」
「そうです。私たちサキュバスは、催眠によって力を抑えていたのです。その戒めを解除するのが、放課後に流れる《チャイム》です」

 宗次の頭に、あの独特な音色が蘇る。

「これから毎日、放課後限定で、私たちの立場は変わります。クラスメイトから、精液を提供するだけの餌に。私は精液を貪るサキュバスに」
「そん、な……」

 思い描いていた夢の学園生活。それは本当に、夢でしかなかったのだ。儚い青写真に、亀裂が走っていくのを宗次は見た。口からは陰惨とした笑みが漏れる。

「あー、こんなとこに隠れてた!」

 そのおり、何者かによって音楽室の扉が開かれた。
 ひょっこりと顔を見せたのは、クラスメイトの有沢アリスだ。彼女の身体にも当然、禍々しい角と尻尾が備えられている。
 踏み入って来た邪魔者に、しかし月夜は相好を崩す。待ち望んでいた相手を見つけたような面持ちで、アリスに向き直った。

「ちょうど良いところに来ました。有沢さん、あなたの能力でおちんちんを勃起させてください」
「ツッキーは出来なかったっけ?」
「私の力は《身体制御》です。《精力増強》のチャームを持つあなたでしか、彼のペニスを勃起させることは叶いません」
「んー、でもなあ」

 気難しい顔で渋るアリスに、月夜は言い含めるように続ける。

「適材適所、というものですよ。私は、彼が抵抗できないよう縛っておきますので」
「むぅ……まったく、仕方ないなー。その代わり、明日はあたし一人に譲ること。その手伝いもしてもらうから」
「承知しました」
「うん、交渉成立。というわけでぇ、宗次」

 話を終えたアリスが、剥き出しとなっているペニスに目を落とした。教室で快活そうな笑みを浮かべていた表情には、普段とは異なる喜色が広がっている。

「あ、アリス……っ」

 声がうわずる。一縷の望みを懸けて、彼女を見上げた。

「あたしの、餌になってね♪」

 アリスの一言は、宗次が考えていた日常を跡形もなく消し去った。自らの意思に反して、ペニスが反り返っていく……。

「目が合ったね。ほんと、何を期待してたんだか。宗次って、馬鹿でしょ」
「そん、な……。信じて、たのに……」
「へえ、恋人でもないのに? 図々しいなあ、宗次は」

 底冷えするアリスの声。細長い尾が揺らめき、宗次の顎を撫でつけた。

「勉強不足のようだからさ。あたしたちの立場を、その身体にしっかり教えてあげる」

 口角を吊り上げるアリス。宗次は、目の前が暗く閉ざされていくのを感じた。


 ――私立水蓮学園。そこは華やかなお嬢様学校などではない。情欲を募らせたサキュバスたちの、淫靡な楽園だ。